第21回不動産承継セミナー 貝田和美先生 「都市計画法の基礎セミナー」

2025年11月15日に非営利活動法人不動産の承継を成功させる会の不動産承継セミナーが行われました。

市街化調整区域での建築許可を取ることをお仕事にしている行政書士さんの立場からお話がありました。不動産業者からすると建築ができる土地なのかどうかは土地の利用価値、価格に大きな影響を及ぼすので不動産業者である私からするとよく相談する相手です。

会員の方はビデオを見られますので良ければビデオでお楽しみください。

以下エッセンスのみですがそうぞしてお楽しみください。

📝 不動産の承継セミナー要点ノート(2025年11月15日開催)

このノートは、NPO法人不動産の承継を成功させる会 第21回セミナーの講演内容を、学術的な聴講ノート形式でまとめたものです。


📋 目次

  1. 開会挨拶(水野 謙 税理士)
    • 都市計画法の難解さと講演への期待
    • 本人の意思確認に関する税理士業務の課題
    • 農業経営基盤強化促進法改正について
  2. 第一部:「都市計画法の基礎セミナー」(貝田 和美 行政書士)
    • 都市計画法の目的と役割
    • 都市計画区域の区分(市街化区域と市街化調整区域)
    • 開発行為の定義と許可の要否
    • 市街化調整区域における建築制限と許可要件
    • 建築の可否判断における複数の法令の遵守
    • 弥富市の特殊な事例
    • 市街化調整区域の開発基準に関する質疑応答
    • 都市計画区域外の規制について

1. 開会挨拶(水野 謙 税理士)

  • 都市計画法の難解さと講演への期待
    • 税理士はFP(ファイナンシャル・プランナー)講師として都市計画法を教える立場にあるが、この分野は難解であり、自身の理解度を深めるために貝田氏の講演を熱心に聴講したいと考えている 1
  • 本人の意思確認に関する税理士業務の課題
    • 第二部のテーマ「本人の意思確認」は、高齢化社会において軽度の認知症を抱える当事者が増加する中で、司法書士や税理士の業務でますます重要になる 2
    • 実際に経験した相続案件では、相続人が認知症の疑いがあり、被相続人の死後に1億円以上の現金の存在を税理士に伝えずに相続税申告が行われた事例があった 3
    • 税務調査に対し、「相続人は現金の存在を知らなかった」と反論し、最終的に税理士も税務署も本人の意思確認を正確に行うことは不可能であるという論理で主張が認められた 4
  • 農業経営基盤強化促進法改正について
    • チラシに記載の「ちょっとなニュース」である**農業経営基盤強化促進法改正については、顧問先の専業農家との関わりで農地中間管理機構**という言葉を目にしたことがある 5
    • この分野は専門外であるため、興味のある方は行政書士などの専門家に相談するのが良いと述べている 6

2. 第一部:「都市計画法の基礎セミナー」(貝田 和美 行政書士)

2.1 都市計画法の目的と役割

  • 目的都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与すること(条文より)7
  • 役割:街に様々な建物が無秩序に乱立し、混乱が生じるのを防ぐためのルールである 8
    • 例:住宅地の隣に工場、通学路にパチンコ店などが建設されるといった事態を避ける規制 9

2.2 都市計画区域の区分(市街化区域と市街化調整区域)

  • 都市計画法では、土地を大きく以下の二つに区分する 10。 * 市街化区域:既に市街地が形成されている区域や、今後計画的に市街化を図るべき区域 11
    • 市街化調整区域:市街化を抑制すべき区域。田畑が多い農村地域などが典型 12。農地や森林の保全、災害リスクの軽減が目的 13
  • 都市計画区域外:日本全国土に都市計画区域が設定されているわけではなく、国土の約27.2%(3割未満)が指定されているに過ぎない 14。愛知県は県土の約68%が指定されており、全国平均と比べると非常に高い 15
  • 非線引き区域:都市計画区域内には、市街化区域と市街化調整区域のどちらにも分類されない区域も存在する 16
  • 確認方法:対象の土地がどの区域に該当するかは、各市町村の都市計画課への問い合わせ、または自治体のホームページで公開されている都市計画図で確認する 17

2.3 開発行為の定義と許可の要否

  • 開発行為を行う際には、原則として許可が必要となる 18
  • 開発行為の定義:「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更19
    • 区画形質の変更:造成工事における切土盛土によって、土地の形状を物理的に変更する行為を指す 20
    • 愛知県では、原則として30cm以上の切土または盛土を行うと開発行為に該当するが、自治体によって細かな基準が異なるため、必ず管轄の自治体に確認が必要 21
  • 区画形質の変更に該当しない例:一つの土地を単に分筆して二つの土地に分けただけで、切土や盛土を行っていない場合 22。この場合は通常の分筆登記で足り、開発許可は不要 23
  • 適用除外:公共施設の整備や小規模な開発行為については許可が不要となる場合がある 24
    • 市街化区域内では1,000平方メートル未満の開発は原則許可不要だが、名古屋市のように、より厳しい基準を設けている場合もある 25

2.4 市街化調整区域における建築制限と許可要件

  • 市街化調整区域の建築原則:原則として建物の建築は制限されるが、法で定められた特定の建物であれば建築が可能である 26
  • 許可の要件:都市計画法第34条に、市街化調整区域でも建築が認められる建物の要件が列挙されている 27
    • 例:「公益上必要な建築物及び日常生活のため必要な店舗等28
    • 愛知県では、県のホームページで公開されている審査基準(小売業、コンビニ、学習塾などの業種が一覧で示されている)に適合すれば建築が可能 29
    • 基準に載っていなくても、個別に県へ相談し、開発審査会にかけることで許可される可能性もあるが、実務上は公表基準に適合するか否かで判断することが一般的 30
  • 具体的な事例
    • 分家住宅:愛知県の開発審査会基準第1号に要件が定められている 31
      • 要件:申請者の直系尊属が長年にわたりその土地を所有し、近隣に居住していることなど 32
      • 県の運用基準として、敷地面積を500平方メートル以内に収めるなどの要件もある 33
    • 既存工場のやむを得ない拡張:隣接地に新しい建物を増築する場合、拡張が「やむを得ない」と認められるかが問われる 34
      • 例:機械が増え、従業員の通路の安全性が確保できないといった具体的な理由が必要 35

2.5 建築の可否判断における複数の法令の遵守

  • 都市計画法の許可は土地利用に関する許可に過ぎない 36
  • 実際に建物を建てるには、建築基準法をはじめとする他の法令も遵守する必要がある 37
  • 例:分家住宅の事例では、都市計画法の許可後、建築基準法や愛知県の条例が定める接道義務(旗竿地の場合、通路の長さによって幅員が異なる)をクリアする必要があった 38
  • 都市計画法の許可を得たとしても、建築基準法や条例に抵触すれば建築できない事態も起こり得るため、建築士など専門家と連携しながら進めることが不可欠 39
  • 実務上は、都市計画法の許可申請を提出する段階で、すでに建築基準法や条例を満たした具体的な建物の計画が固まっている状態が望ましい 40

2.6 弥富市の特殊な事例

  • 弥富市の市街化調整区域内に存在する特定の団地では、旧住宅地造成事業に関する法律に基づき、過去に造成された土地について、都市計画法の許可が不要な場合があることが判明した 41
  • この団地では、誰が土地を購入し、建て替えを行っても特別な許可は不要 42
  • これは全国共通のルールではなく、自治体によって対応が異なるローカルなルールであるため、常に管轄の自治体に確認することが重要 43

2.7 市街化調整区域の開発基準に関する質疑応答

  • 質疑(不動産鑑定士より):既存集落地域内の宅地を開発(分譲住宅地として細分化)する際の区画面積の最大・最低基準について 44
    • 回答:最低面積160平方メートル以上は愛知県の審査基準に基づく 45
    • 区画の最大面積500平方メートル以下という規定は、愛知県の審査基準の「既存の宅地における開発行為」に関する項目に記載がある 46
    • ただし、開発の基準は個別で異なり、住宅地として開発を行う用途が明確であれば、その基準に従う 47

2.8 都市計画区域外の規制について

  • 都市計画区域外では、基本的に都市計画法の規制は適用されず、建築基準法など他の法律をクリアすれば建築が可能 48
  • 愛知県では、奥三河や設楽町、東栄町などの山間部が都市計画区域外となっている 49
  • 都市計画区域外では比較的自由に建築ができたため、過去には安価な山林を買い取り、無秩序な造成販売が行われた**「乱開発」**の事例も見られた 50
  • 都市計画法や線引きは、このような無秩序な開発を防ぐために整備された 51

参考文献:『都市計画法の開発許可の実務の手引き』などが参考になる 52


このセミナーで、都市計画法の基本構造、特に市街化調整区域での建築の可否判断が、単に一つの法律だけでなく、自治体のローカルな審査基準建築基準法との複合的な検討を必要とすることが再確認されました。

Follow Me